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HERNIA

鼠径(そけい)ヘルニア外来のご案内

当院では2011年9月1日から、鼠径ヘルニア外来を行っております。下記の症状・状態がありましたら、お気軽に担当外科医師にご相談ください。鼠径ヘルニア外来にて診察いたします。

担当医師

副院長 兼 リハビリテーションセンター長

山口 祐二(やまぐち ゆうじ)

院長

鶴田 豊(つるた ゆたか)

外科部長 兼 一般病棟長

村野 武志(むらの たけし)

Features

鼠径ヘルニアとは?

鼠径とは、両側下腹部・足の付け根の箇所を指します。
ヘルニアとは、体内の臓器や組織などが本来ある場所から脱出した状態を指します。腰の病気の椎間板ヘルニアが有名ですが、全く違う病気です。

鼠径ヘルニアとは、この鼠径部の筋膜(筋肉を包む膜)の一部が弱くなり、腹膜(腹壁の一番内側にある膜)がこれを押し上げ、腹壁内に飛び出す病気です。この飛び出た部分の腹膜をヘルニア嚢といい、この中に脱出する臓器は小腸が最も多く、俗に脱腸とも呼ばれます。

成人鼠径ヘルニアは非常に多い病気で、一生のうち男性の27%、女性の3%に発生します。日本では年間約15万人の方が手術を受けられています。鼠径ヘルニア手術は、外科疾患では痔の手術の次に二番目に多い手術です。部位的に恥ずかしがられたり、我慢する方や、痛みがないために受診されない方も多くいらっしゃいます。
鼠径ヘルニア患者の80%以上が男性ですが、女性にも認めます。60歳以上の方に発生頻度が高くなります。
また嵌頓を起こし、救急手術となるケースもしばしば見受けられます。嵌頓の確率は成人の場合年間1%程度で、発症後3ヶ月以内または50歳以上の方は更に高確率です。

鼠径ヘルニアの症状

  • 立った時やお腹に力を入れたとき、鼠径部に柔らかい腫れを感じます。腹腔内臓器がヘルニア嚢中に脱出し体表からふくらみとして感じるからです。
  • 仰向けになったり指で押さえると、通常は引っ込みます。
  • 脱出に伴う鼠径部の不快感や痛みを感じ、徐々に増悪することがあります。
  • 腫れが急にかたくなり、指で押さえても引っ込まなくなることがあります。腸閉塞や腸管虚血(血流障害)の原因となり、その状態を『嵌頓』といい、緊急手術(場合によっては開腹手術や腸管切除も行わなくてはいけません。)の適応となります。
  • 嵌頓に対する手術の頻度は、鼠径部ヘルニア手術の5%前後といわれております。
  • 男性であること(鼠径部の構造上、男性に多い)
  • 加齢に伴う筋肉の衰え
  • 家族歴(組織の脆弱性に遺伝性があることが指摘されています)
  • 職業歴(40代以上の中高年は、鼠径ヘルニアの原因に職業が関係していることが指摘されており、腹圧のかかりやすい立ち仕事に従事する人に多く見られます)
  • 喫煙(喫煙による肺気腫同様の組織の脆弱性が、鼠径ヘルニアのリスクであることが指摘されています)
  • 慢性咳嗽(実験にて、咳とくしゃみは通常の運動の10倍程度の腹圧上昇が確認されています)
  • 慢性的な便秘
  • 妊娠と出産
  • 既往歴(腹部手術や前立腺摘出後など)

性別、加齢、先天的な因子を避けることは困難であり、予防策を講じるよりも、症状が出始めた際の早期診断・早期治療が重要です。

鼠径ヘルニアは自然には治りません。鼠径ヘルニアに対する治療は手術が原則です。ヘルニアバンドで一時的に脱腸を抑える方法もありますが、あくまで一時的な対応です。

鼠径部ヘルニア診療ガイドライン上、理学所見や画像所見にて確定診断が得られた場合、通常は手術適応となります。

当院で採用している腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術法(TAPP法、TEP法)、鼠径到達法はポリプロピレン製のメッシュで弱った部分を補強し、腸などが出てくるのを防ぐ手術法です。どちらの手術も体の組織に緊張がかからない為、術後の突っ張り感が少なく、従来の手術法に比べ術後の痛みが軽くてすみます。当院では、ヘルニアの種類や患者さんの希望、さらに年齢や全身の状態などから、最も適切な手術法を選択するようにしていますので、手術法の選択に関しては担当医師とご相談ください。

当院では鼠径ヘルニアに対して、腹膜外到達法による腹腔鏡下ヘルニア修復術(TEP法)と、腹腔内到達法による腹腔鏡下ヘルニア修復術(TAPP法)を行っております。この手術法の利点はなんといっても術後の痛みや腫れの少ない体に優しい手術であるということです。また術後の傷も最大1.5cmですみ、美容上も大変すぐれています。

腹腔鏡下手術では、従来から行われているお腹を切開する鼠径法手術と異なり、まずお腹に5mmから12mmの小さな穴を3ヵ所あけます。そのうちの1つの穴から腹腔鏡を入れてお腹の中を映します。その像をビデオモニターで観察してヘルニアの状態を確実に診断し、別の穴から入れた手術器具を操作して患部の治療をします。よって修復の確実性が高いと考えております。腹腔鏡下手術は、ビデオモニターを見ながら、人工補強材(ポリプロピレン製メッシュ)で内側からヘルニアの出口を覆う手術であり、1980年代より使用され、最近特に普及してきております。

  • 手術創が小さい(3mm~15mmの小さな穴が3ヵ所)(開腹手術では5cm程度)
  • 再発率が低い
  • 術後の痛みが少ない
  • 入院期間が短い(通常2〜4日)(当院の術後平均在院日数1.3日)。
  • 日常生活に早く戻れる(職種にもよりますが、当院の術後平均仕事復帰日数4.8(1~17日)日)。
  • 両側の鼠径ヘルニアでも、同様の傷で同時に治療できる。
  • 腹壁の内側から手術を行うので、症状のないヘルニアの見落としが少ない。

実際のTEP法の術後の傷

初診時の外来

初診時の診察(視診・触診・超音波検査もしくはCT検査)により、鼠径ヘルニアと診断された場合、病気の概要や手術法についてご説明し、ご本人の治療の希望を伺った上でほとんどの方はその日に手術の日取りまで決めます。

他の疾患(例えば心臓病や糖尿病)があり、現在も治療を継続中の方は、その疾患の主治医に手術に際しての注意事項を確認したり、特殊な薬(特に血液の凝固を防ぐ薬)を服用中の方に関しては中止可能かどうか確認する必要があります。さらにこれらの問題がない場合、(同日もしくは別日に)術前検査を受けていただきます。

術前検査

血液検査、尿検査、レントゲン、心電図、肺機能検査など。こうした検査で、心臓などに異常が見つかることもあります。また既往症としてそのような疾患のある方も、追加の検査(心エコー・頸部血管エコーなど)を行うことがあります。そのような場合は、しかるべき診療科の医師の診察を受けていただき、そちらの治療を優先して行うこともあります。

術前検査を受けられ、麻酔(全身麻酔もしくは脊椎麻酔)と手術に際して問題ないと判断できれば、詳しく手術の説明をさせていただきます。麻酔科医師の診察と、麻酔の説明も受けていただきます。さらに看護師よりクリティカルパス(あらかじめ 決められた入院計画)にて、入院中の治療の流れを説明いたします。以上で外来終了です。

入院から手術

手術当日(朝)、もしくは前日(午後)に入院していただきます。

術当日の朝は絶食で、飲水は手術直前2〜4時間前まで可能です。

術前の処置をします(点滴など)。

手術時間は、30分~1時間30分程度です。

手術が終了し、帰室後2時間後から飲水可能です。しっかりと目が覚めれば、夕方より歩行可能となります。

翌日朝から食事を取っていただけます。翌日の診察上(手術創と鼠径部)問題なく、採血検査・レントゲン検査にて問題なければ退院可能です。基本的には1泊2日、もしくは2泊3日の入院となっています(当院の平均術後在院日数1.2日)。

退院後の経過

入浴は手術翌日から可能です。

創表面はダーマボンドという、手術創専用の滅菌された接着剤で覆いますので、消毒や処置を行う必要がありません。

もしその間に皮膚の発赤,創部からの排液,過度の疼痛等がみられれば、当院にご連絡をいただき、外来受診の是非を仰いでいただきます。

普段の生活や事務仕事や散歩などの軽い運動は、(個人差はありますが)手術翌日から痛まない程度、疲れない程度に行ってかまいません。

約2週間後に外来を受診していただきます。その際に痛みなどの症状をお聞きし、手術創と鼠径部の診察をし、問題なければ治療終了となります。その後はゴルフなどそれ程激しくない運動であれば、再開することが出来ます

ジョギングやテニスなどの激しい運動や、筋力トレーニングは、だいたい術後4週後くらいから身体の調子に合わせて開始できます。

Q&A よくあるご質問

A.成人の鼠径ヘルニアは自然には治りません。鼠径ヘルニアに対する治療は手術が原則です(子供の場合はまれに自然に治る場合もあります)

また腫れが急にかたくなり、指で押さえても引っ込まなくなる『嵌頓』になると、場合によっては緊急手術になることもあります。症状が出始めた際の早期診断・早期治療が重要です。

A.開腹手術ではなく、腹腔鏡を用いて手術を行います。そのため体の組織に緊張がかからず、術後の突っ張り感も少なく、従来の手術法に比べ術後の痛みが軽くすみます。

また後遺症が残ることはほとんどありません。体内に残すメッシュ(人工補強剤)も安全性が確立されたものですのでご安心ください。

A.基本的には1泊2日、もしくは2泊3日の入院が必要です。

A.30分〜1時間30分程度です。

A.普段の生活や散歩などの軽い運動は、手術翌日から痛まない程度、疲れない程度に行ってかまいません。仕事復帰は職種にもよりますが、術後平均仕事復帰日数は6.1日となっています。

A.退院後、約2週間後に外来を受診していただきます。その際に痛みなどの症状をお聞きし、手術創と鼠径部の診察をし、問題なければ治療終了となります。その後はゴルフなどそれ程激しくない運動であれば、再開することが出来ます

ジョギングやテニスなどの激しい運動や、筋力トレーニングは、だいたい術後4週後くらいから身体の調子に合わせて開始できます

A.小児の鼠径ヘルニアは、腹膜鞘状突起という袋状の出っ張りの開存(本来退化消失すべき器官が存在すること)が原因です。

男性の精巣は、胎児7ヶ月ごろまで体内の腎臓の下付近にあります。出生が近づくと、精巣は下降していき、やがてお腹の外へ出て、生まれてくるときには陰嚢内に収まっています。この下降の際に腹膜の一部が伸びてできる出っ張りが、腹膜鞘状突起です。精巣が通った穴を内鼠径輪、通り道を鼠径管と呼びます。この現象は、精巣のない女性にも起こります。

精巣が陰嚢内に下降した後、通常であれば腹膜鞘状突起は自然に閉鎖しますが、先天的に腹膜鞘状突起が閉じないまま生まれてくることがあります。子どもの鼠径ヘルニアは、こうして開存した腹膜鞘状突起を通じて脱腸が起こることで発症すると考えられています。

成人の場合は、加齢による筋膜の脆弱化(もろくなること)が原因と考えられています。

加齢に伴って鼠径部周辺の腹壁の筋肉・筋膜が衰えてもろくなると、内鼠径輪は徐々に拡大していきます。大きくなった内鼠径輪の隙間やその内側近傍から、腹壁の一番内側を包み込んでいる腹膜が脱出してヘルニア嚢をつくります。このヘルニア嚢の中に小腸などが飛び出してきた状態が、鼠径ヘルニアです。

発生学的な要因で起こる子どもの鼠径ヘルニアと、筋組織の脆弱化によって起こる成人の鼠径ヘルニアの発症のメカニズムは異なります。成人の鼠径ヘルニアの場合は、鼠径部を閉鎖するだけでなく、弱くなった筋肉を補強しなければ、再発する危険性が高くなります。

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